ビデオテープ  No.057

 

中学生の頃、手が小さい野球部の男Aがいた。

男Aの手があまりにも小さいので友人達とからかっていたが、男Aと私の手のひらを重ねて比べみると丁度同じ大きさだった。

 

おかげで、男Aだけでなく私も一緒にからかわれる羽目になった。

 

 

その結果、男Aと私は友達になった。

 

 

それからはよく学校が終わると、男Aと一緒に帰るようになった。

そんなある日の帰り道、男Aが私にこう言った。

 

「今日学校で友達にビデオを貰ったんだけど一緒に観ないか?」

 

私がどんなビデオか聞くと、彼はカバンを少し開き中にあるビデオテープを見せた。

 

ビデオテープにはとんでもなくエッチなタイトルのラベルが貼ってある。

 

私はしばらく(約0.2秒)考えたのち、男Aの家でそのビデオを観ることに決めた。

 

いつもは歩いて帰るのだが、その時私達は走って帰った。

期待で顔には自然と笑みが浮かぶ。

 

男Aの家に着くと誰もいない事を確認して、リビングにある大型テレビのビデオデッキにテープを押し込んだ。

 

ビデオテープを入れ再生する。

 

何かおかしい。

 

テレビ画面に映し出される映像はずっと青一色で、音声も全く出ていない。

しかも何かデッキから変な音がしている。

 

私達はビデオデッキがダメになっていることを悟ると落胆し、救いのない無常な世界を嘆いた。

 

仕方がないので諦めて男Aがデッキからビデオテープを取り出そうとした。

しかしここで大きな問題が発生する。

 

そうビデオテープが取り出せないのだ。

 

どのボタンを押しても、電源を入れ直してもダメ。

私達は焦った。

男Aの家族が帰ってくるまでには何とかしないといけない。

 

しかし結局、我々ではビデオテープを取り出すことは出来なかった。

 

仕方なく私と男Aは、帰ってきた男Aの父親に正直に話した。

 

彼の父親は我々の話を聞くと、笑って許してくれた。

 

その優しい笑顔に私達は救われた。

 

後日私が男Aの家に遊びに行くと、テープは既に取り出されていた。

どうやら彼の父親がデッキを修理に出し、取り出してくれたみたいだ。

 

私が男Aにテープはどこにあるか尋ねる。

 

彼は「知らない」と答えた。

 

そこで私はその日休みで家に居た男Aの父親に直接聞いてみた。

 

すると彼は「あのビデオはお前達にはまだ早いから処分したよ」と答えた。

 

私は「ではあのビデオの中身を観たんですか?」と聞く。

 

彼は「中身は観てないから知らないが、あのタイトルを見れば分かるよ」と笑って答えた。

 

 

私は2つとも嘘だと分かったが、笑って許してやった。

 

ちなみにこのしばらく後、このビデオテープは、男Aの父親のデスクの引き出しの奥から、男Aにより発見されることとなる。

 

 

 

 


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