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王様の笑顔   No.26

 

朝は好きな時に起き、夜は好きな時に寝る。

 

お腹が減れば、声をあげてお付きの人を呼ぶ。

お付きの人は、ご飯を持ってきて好きなだけ食べさせてくれる。

 

お風呂の時は抱きかかえられ浴槽まで行き、お付きの人に身体中を洗ってもらう。

トイレも好きな時に好きな場所でし、お尻はお付きの人に拭いてもらう。

 

暇な時は声をあげれば、お付きの人が来て一緒に遊んでくれる。

 

王様ですら、ここまではしてもらえないだろう。

王様ですら、ここまで自由には振る舞えないだろう。

 

赤ちゃんに嫉妬する訳ではないが、お付きの人である父の私は、娘が少し羨ましい。

「お前は王様より良い生活を送っているんだぞ」と私が娘に言う。

まだ喋れない娘がニコッと笑う。

私も妻もその笑顔で一日の疲れが吹き飛び、夜泣きの大変さも忘れる。

 

先日、私は会社でミスをした。

 

烈火のごとく怒り狂う上司。

 

いつもなら私は適当な言い訳で逃げる。

そしてだいたいは、言い訳に失敗して余計に怒られる。

 

だがその日は違った。

私はその時、娘の笑顔を思い出した。

あの何でも許してしまう、可愛らしい笑顔を。

 

私は怒り狂う上司に優しく微笑んだ。

 

「お前、なに笑ってるんだ。俺を馬鹿にしているのか?」

 

いつも通り、余計に怒られた。